先天的な力

音読が嫌いだと弟が言った。完全に同感で、メリットがわからん、音読中は意味なんか頭に入ってこない。と思ったら母が、口に出して耳で聞くことで理解ができることあるでしょう、と言った。弟は若干同意気味だった。

そんなことは私は全くない。マジでない。目で見たものを発音するので手いっぱいで、発音ミスってないか耳で確認、までやるとなおのこと意味の理解どころの話ではない。音読した文章が初見なら音読後読み直すときにやっと内容とはじめましてだし、知ってる文章の音読中は自分が内容のどの部分を読んでいるのか分かっていない。とどこおりなく発声してはいます。

でも事実音読が理解の助けになる人がいるらしいと分かったから、高校の頃の英語長文読解の授業であった、新しい長文をやるたびにまずその読み上げ音声CDを聞き、読み上げ音声から半拍遅れで音読してついていく、という行程に大きな意義を見いだせる。あれは理解を助けるための作業だったのだ、多分。他にも例えば英語に耳を慣らすとか発音スピードを早めるとか期待される効果はあるけど、わざわざ読解の時間にやってたということはきっと。

 

ジャンルが近いので書くが、読書中に周囲の人にその本の言語でおしゃべりされると内容が入ってこなくなる。イヤホンがないとおちおち外に出られない原因の一つだ。作業の種類によって聴くジャンルも限定される。絵を描くときは言語入りの曲が聞ける。何か読むときは、できるだけ言語が入っていないもの。次点でその文章のとは違う言語の音楽。完全な無音は集中できない。というか全部集中力のなさが原因な気がしてきた。あとツムツム中に会話するのもできない。

 

母や弟にできて私にできない先天的な技能は多々ある。方角を常に把握する能力(ハトか牛っぽい)。異なる方向に置かれた2つの時計が同じ時刻を示しているかわかる力。直径の異なる鍋蓋の列から使ってる鍋にハマるものをぱっと選ぶ力。歯を磨きながら数独を解くこと。素早く何かを皮肉ること。

私にできて彼らにできない技能は、思いつかない。母よりは酒に強い。

 

ところで母は被服科の女子短大卒なので私がこのまま卒業した場合学歴としては世間的にはかなり差があることになるのだが、教養もレスポンスの速度と質も私より明らかにある。母は高校は進学校に通っていたが女だったため地元から出させてもらえず、地元の国立大は通う気になれず、ささくれた結果入試で三角形の面積を問う問題が出るようなレベルの短大に進んだ経緯がある。今考えると伝統的な人形作りの職人とか天職だったと思うのよ、飛び込んで住み込みで修行すればよかった、と年一くらいで母は言う。母が進路を思うさま決められなかったおかげなのかせいなのか、私が存在している。私にとって恋の運命論が全然ぴんとこない一因。

いや、進路を、伴侶を、人生の選択を、全然自分で決められない人にとり、ある一つの大正解に進んでいると信じることは、あらゆる不自由を冒険に様変わりさせるすごい効果があるのかもしれない。強いライフハック。とするとアナ雪のストーリーは一定の国や地域の人にはそんなに響かなかったかもしれない。あれは自分である程度以上選択できる人向けの話だ。


今よりずっと女に学歴がつかない時代には、今よりずっと金持ちしか、上流階級しか進学できない時代には、学歴がつく形質とつかない形質の結婚が現在よりも容易だったと思われる。今は昔と比べるとたぶん、学歴がつく同士とつかない同士でくっつきがちなんだろう。学歴がつく形質で学がない人は、つかない形質で学がない人と比べ、たぶんよりたくさんお金を稼ぐ。その子どもは親より学歴がつく。学歴があるとおおむねたくさん金が稼げるから、金持ちになる。同じくらいの学歴の人と次世代を作る。金持ちの家柄になる。

こういうメインストリームか?わからない。